国画会が運営する日本最大級の公募展。

版画の種類と刷り→アクアチント技法 (2017 08 17) 提供作家の作品情報

アクワチントによる銅版画制作ー版を楽しむー

特徴;松脂によるアクワチントを利用して、均一な明るさの面作りや、無段階の明から暗への表現。溶剤を使ってできる不均一な腐蝕面等々の面表現と、腐蝕止めに使うシールを利用した深いエッチングの線や盛上りなど、これらで面上を構成し、表情豊かな銅版にすることを試みました。


制作工程:概略 

  1. 銅板の裏と磨いた表面に防食シートを貼る。
  2. 下絵をトレーシングペーパーに写し、下絵を転写する。
  3. 腐蝕する部分の防食シートを切り取る。
  4. 露出した銅板に松脂の粒や粉を濃淡の調子ができるようにかける。
  5. 加熱して松脂を定着、また部分的に溶剤で溶かし不均一面を作る。
  6. 腐蝕液に浸して、銅板上にインクの溜まりを作る。
  7. 松脂を除去した後、サンドペーパーや様々な道具で版を整える。
  8. プレス機で試刷りし、版の状態を観察、さらに調整し本刷りする。

準備する道具、材料 :

  • 下絵、トレーシングペーパー、転写用
    カーボン紙         銅板の道具;時計回りにビュラン(上中央)、バニッシャー(2本)、小刀、カーボン紙、防食用シート、サンドペーパー、ニードル、ルーレット、バニッシャー、松脂(中央)など
  • 小刀、スクレイパー、ルーレット、バニッシャー、ビュラン
  • 松脂の粉、ザラメ状のもの
  • 腐蝕液、防食用シート
  • 銅版用インク、ゴムヘラ、寒冷紗、拭取り用の紙
  • 刷り用紙(ハーネミューレ)

銅板の道具(右写真)。時計回りにビュラン(上中央)、バニッシャー(2本)、小刀、カーボン紙、防食用シート、サンドペーパー、ニードル、ルーレット、バニッシャー、松脂(中央)などを使います。


● アクアチントの制作過程:詳細・・・・詳細は画像をクリックし拡大画像で!  

 下絵は完成と同じくらいの大きさに描きます。骨格になる線、面で構成します。
下絵は完成と同じくらいの大きさに描きます。骨格になる線、面で構成します。
防食用シートを貼ります。シートは腐食しない線、帯、面などをカバーするために使います。途中、制作の進行に沿って取除きます。
防食用シートを貼ります。シートは腐食しない線、帯、面などをカバーするために使います。途中、制作の進行に沿って取除きます。
原寸のトレーシングペーパーにイメージを描き移します。この時に拡大しながら部分的にイメージの修正もします。
原寸のトレーシングペーパーにイメージを描き移します。この時に拡大しながら部分的にイメージの修正もします。
下絵を移したトレーシングペーパーを裏返して、カーボン紙を使って下絵の逆絵を銅板に移します。
下絵を移したトレーシングペーパーを裏返して、カーボン紙を使って下絵の逆絵を銅板に移します。
下絵が銅板上のシートに移されたところ。絵は完成時の逆向きになっています。 
下絵が銅板上のシートに移されたところ。絵は完成時の逆向きになっています。
シート上の下絵から、腐食する場所のシートを切取ります。 
シート上の下絵から、腐食する場所のシートを切取ります。
松脂の塊を乳鉢で砕き、ザラ目状、粉状にしたものを使い分けます。ザラメ状のものを振り落とす時は寒冷紗で、粉の場合は目の細かな布で蓋します。
松脂の塊を乳鉢で砕き、ザラ目状、粉状にしたものを使い分けます。ザラメ状のものを振り落とす時は寒冷紗で、粉の場合は目の細かな布で蓋します。 
輪郭を消したい所に松脂の粉を指で摘まんで置きます。加熱するとシートと松脂の境界線がなくなります。 
輪郭を消したい所に松脂の粉を指で摘まんで置きます。加熱するとシートと松脂の境界線がなくなります。
腐食液に浸した後の腐食面です。溶けた松脂とシートが一体の防食材になって境界線は出ません。
腐食液に浸した後の腐食面です。溶けた松脂とシートが一体の防食材になって境界線は出ません。
背景になる面に松脂を落とします。ボカシにするところはこの段階から松脂の密度をボカシになるように落とします。
背景になる面に松脂を落とします。ボカシにするところはこの段階から松脂の密度をボカシになるように落とします。
加熱後に松脂が密着した状態(上)。部分的に溶剤を垂らし不均一な面を作った(下)後、腐食液に浸けます。
加熱後に松脂が密着した状態(上)。部分的に溶剤を垂らし不均一な面を作った(下)後、腐食液に浸けます。
全体を腐食させた銅板。細かな汚れ、意図しない線はバニッシャーで潰したり、ビュランでラインを整えます。
全体を腐食させた銅板。細かな汚れ、意図しない線はバニッシャーで潰したり、ビュランでラインを整えます。 
左がインクを詰めた銅版(部分)。右は刷上がり。意図した以上に濃く出ている所をスクレーパーで削り、サンドペーパー、バニッシャーで表面を整えます。
左がインクを詰めた銅版(部分)。右は刷上がり。意図した以上に濃く出ている所をスクレーパーで削り、サンドペーパー、バニッシャーで表面を整えます。
試刷りを数回します。刷り上がりを見て再度アクアチント、ビュラン、ニードルの線を加えるなどの作業をします。
試刷りを数回します。刷り上がりを見て再度アクアチント、ビュラン、ニードルの線を加えるなどの作業をします。
今回の最後のインク詰め(版サイズ425×325㎜)
今回の最後のインク詰め(版サイズ425×325㎜)
刷りは工房で最も大きいプレス機(ベッドプレート150×80㎝)を使用。安定感のあるプレス機で、版の良し悪しが表れ、作者を振り返らせてくれる信頼感のあるプレス機です。 ハーネミューレ全紙がノーカットで納まる点でも好都合なプレス機です。
刷りは工房で最も大きいプレス機(ベッドプレート150×80㎝)を使用。安定感のあるプレス機で、版の良し悪しが表れ、作者を振り返らせてくれる信頼感のあるプレス機です。 ハーネミューレ全紙がノーカットで納まる点でも好都合なプレス機です。

 

(協力:特定非営利活動法人アトリエ凹凸 代表 神野立生)

 

 

 


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