90回記念号 p5 | 国展

国画会が運営する日本最大級の公募展。

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仕事場から(2) 

 kasai-work幻花 26×34cm 準会員 笠井直美

版画を始めたきっかけは「リトグラフって何?」でした。出発は遅かったけれど、可能性への認識を深めながら、現在に至るまで制作し続けています。
制作に取りかかるときは、まず、頭の中に漠然としたイメージをつくります。植物の生命力みなぎるようなフォルムに魅力を感じるので、ミクロ的な不思議な部分、謎めいた部分、生き生きした躍動感を捉え、定着させたいと思っています。頭の中で考え、視覚的な像にまとめるまでのプロセスが、時間的には長いかもしれません。そこから、イメージを平面に定着させるために、ディテールをデフォルメしたり、有機的に間連づけたりして、具体的な形ができていきます。
 版画は、絵を描くのに比べて不自由さがあり、それを克服しようと試行錯誤するところに面白さがあるのではないでしょうか。リトグラフは直接描いて版にしていきますが、描いた通りにならないもどかしさがあり、そこを工夫して乗り越えていくのが面白さであり、継続につながっているのではないかと思っています。(神奈川県藤沢市在住)

takano-work

 Ame 18×18.5cm 準会員 高野理栄子

ここ数年『雨』をモチーフにしている。大気から水の滴が重力によって落下するだけの現象に自分でも思いも寄らない何かを付着させて制作している。私の版画制作現場は、北海道の小樽市という小さな町にある。夏は短い中でも表情のある雨が降り、冬は雨が雪に変わり背丈ほどの積雪量で一面色数が減少する。この町に生まれ育ち日々過ごす中、意識はしていないが自分の作品には少なからず土着性が含まれているように感じる。無意識な状態でこの性質が写し出された版画として紙に剥ぎ取られている。そう考えると不思議で貴重な愛すべき体験をしているように思う。とはいえ、誰しも生まれ育った地はあるもので、何も言っていないに等しいとも思う。それでも尚、この北国の小さな町から離れずに制作しているのは何故か。根底に微量の都コンプレックスを抱えながらも外を見ると、小樽の季節は刻々と変動していく。さて、『雨』は降っているのか、降っていたのか。感謝。    (北海道小樽市在住)

kanda-work青写真ー6 84.1×118.9cm 準会員 神田和也

版画を始めてちょうど20年になります。縁があって国展に出品を始めて6年目になりますが、そこでそれまでとまったくちがう版画の世界を見ることとなりました。私は大学で版画を学び、卒業後その経験をもとに制作をしてきましたが、国画会版画部には、もっと様々な経歴を持った人達が集まっていました。版画のための版画ではなく、表現に関してジャンルに縛られない自由な姿勢の作家が多くいることに新鮮さを覚えました。これは私にとっても精神的に自由になれました。また、技法に対する捉え方も柔軟さを感じます。手刷りか機械刷りかに関わらず、作品としてどうかが重要なのだと思うようになりました。
 近年は残像、潜像、青写真など、いずれも写真の現像過程の概念をテーマに、人間の残留思念の痕跡のようなものを写し取ろうと試みています。
 最近、同世代の仲間がだんだんと制作から離れていく状況を見て、作家活動を続ける事の難しさを感じます。私も日々の生活に忙殺される毎日ですが、それでもやめずに続けようと考えています。         (東京都世田谷区在住)

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