国画会が運営する日本最大級の公募展。

絵画部 会員インタビュー

第8回 鹿児島  2010.02

北海道~沖縄までの会員・準会員のインタビューとご紹介

 

 花は何故美しいのか、考えたことがありますか。

美しい自然は人の心を慰め癒してくれますが、何故かと考えたことがありますか。 絵の世界では、具象絵画でも抽象でも、心象でもコンテンポラリーであっても全てのものが、制作の過程もしくは結果で美しい自然の真実に少しでも近づくように心がけます。

 それは、人がなんだかの、感動を覚えるのは、その人の培われた自意識や、深層心理の中に内包されていた記憶を呼び覚ますからです。ものに感動するのは記憶の底に、その民族が何千年もかけて育んで来た、大切な感性が宿っているからです。 美しい四季を感受できる日本人と、満天の星空にロマンを育む砂漠の民とでは感性が自ずと異なるのです。 美しい自然や、物ごとに感動するのは、感動する感性が備わっているからです。だが、美しい山も、海も川も、それを補う大自然が共存し一つの場面となって感動を呼ぶ演出をしてくれるからです。

 

 私たちの大切な感性は、みんな長い永い時間をかけて、大自然から学んだものです。 絵の世界も同様です。絵の中での美しい表情も、大切な「絵の中のことば」もそれを強調する脇役の存在が必須ですし、それと共存し協調し得る大きな意味を持つ無駄の部分があってこそ、観る者に作家の大切な意図が確かに伝わるのです。

 優れた作品をつくるには、作家は良いディレクターでなければならないでしょう。
中世の日本においては、美しい自然や、人の世の権勢の移ろいと必衰の理に、寂寥と無常を悟り、文学や絵画の世界では宗教的無常観を表現の糧とします。

国画会の洋画部を創始された、梅原龍三郎は西欧遊学の中で、ルノアールから日本民族の優れた感受性と美意識を諭されます。帰国後その教示を啓蒙するのです。

文壇や画壇の常として、同じ思いの仲間が群落し植物の如く成長するのです。日本民芸運動の指導者で哲学者の柳 宗悦も賛同され新しい工芸の道を切り開きます。西洋の模倣ではなく、東洋的な美意識と審美眼に立脚した日本人の感性で表現することを主張した画壇が育ち、その志向は広く継承され、特に国画会では多くの優れた作家が育ったのです。

 

 九州国展もその成果の一端です。口碑によりますと、熊谷九寿が梅原龍三郎の理念の浸透と、故郷への想いで同郷の弟子、長野静司の会員推挙を期して託し発足に向かって歩み始めたのです。

 あとで帰郷する宇治山哲平や岩尾秀樹がその志を継ぎ協力しあって1960年11月1日に念願の第一回展を大分市で開催するのです。 会場には、熊谷の特別な計らいで、特別出品として、梅原龍三郎、庫田 高、香月泰男、伊藤 廉、工芸の浜田庄司、バーナード・リーチの秀作が並び圧巻でした。その警備に夜を徹したことは忘れられません。

 第一回展の主旨文には「多くの美術団体の中で各部門とも日本的な風土と密着した作風とヒューマニティーを常に方向として・・・・・・・・」と述べております。

その歩みは今も西部国展として発展しております。

国画会 絵画部会員 松野 良治

 

 

 7人でスタートした鹿児島国展も、今年9日目となり、絵画部で21名の会員となりました。鹿児島は、黒田清輝や藤島武二を生み、東郷青児、海老原喜之助と近大洋画家を数多く輩出した絵の盛んな土地柄です。「風の芸術展」(枕崎市)などをはじめとする公募展も数多くあり、また、地元・南日本新聞社の主催する南日本美術展(過去に2回、島田章三先生も審査員を務められました)では、1年間のパリ留学制度を設けるなど、美術を志す者にとっては、恵まれた美術活動支援があります。鹿児島市立美術館では毎年、夏期講習会が開かれ、国内の著名な先生方が指導してくれます。もちろん国画会の会員の方々も数多くお見えになっております。また、昨年は、西部国展が、鹿児島で初めて開催され、多くの美術愛好家を楽しませ、大好評のうちに終了しました。

 私は南の小さな島で、生まれ育ちました。まだ、沖縄が返還されておらず、隣の与論島が日本最南端でした。幼い頃、離島ブームで、若い美術学生がたくさん島を訪れ、島のあちこちでスケッチしている姿が見られました。学校の宿直室に寝泊まりし、私たちに絵を教えてくれたことは、強烈に印象に残っています。幼い頃のこのような体験が、今日まで、私に絵を描かせているのかもしれません。私が国展に出品して今年で10回目を迎えます。10年一区切りと言いますが、いい仕事をしたいと思っております。

 来春は、福岡-鹿児島間の新幹線ルートが開通されます。期を同時に第85回国展で、国展九州展が7月初旬、福岡市立美術館(特別展示室A、B他)で開催されることになりました。会員の皆様の大作が九州の地で展示されることは、多くの美術ファンのみならず、新たな美術を志す人たちへの刺激となることだと思います。西部国展のメンバー一同、協力して成功させたいと準備しております。この機会に、鹿児島へも足をお運びいただき、梅原龍三郎先生の描いた桜島を是非ご覧下さい。皆様のご来鹿をお待ちしています。

国画会 絵画部会員 東條 新一郎

     2020/06/01  絵画部・会員インタビュー


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