国画会が運営する日本最大級の公募展。

第99回国展工芸部初入選の声

 

第99回国展に出品された初入選の方々にご連絡させていただき、ご返答戴きましたコメントをお知らせいたします。

項目として以下の事にお答え戴きました。

○なぜ国展に出品しましたか?
○制作の原動力になるものは?
○10年後、どうありたいとお考えですか?
○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか?

今回コメントを寄せていただきました初入選の方々に御礼申し上げます。
(敬称略)(撮影:小池亮輔)


 

筏流し

(染)一澤 文江

○なぜ国展に出品しましたか?

 普段、作品制作を指導して頂いている先生以外の方から、自分の作品を講評して頂きたかったためです。

 また、入選したら国立新美術館に自分の作品を展示出来るという点も、出展の励みになりました。 

○制作の原動力となるものは?

 オリジナリティのある作品を作りたいと思う気持ちが、制作の原動力となっています。考えがまとまらないときは、美術展で様々な作品を鑑賞してヒントを頂いたり、普段とは違う景色を見に出かけて気持ちをリフレッシュしたりしています。

○10年後、どうありたいとお考えですか?

 絞り、藍染という分野に関わらず、何かしら自分なりのオリジナリティがあるものを作り続けていたいです。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか?

 国画会工芸部に対しては、国展の際にとてもお世話になっていると思っている以外には、特に具体的なイメージは持っておりません。


 

春が来た

(織)イラズムス 千尋

○なぜ国展に出品しましたか?

  知っている作家さんが出品されていて、以前から気になっていました。

 図録を見せていただき、のびのびとした美しさや力強い美しさを持った作品が多く、こちらに挑戦させていただくことで、自身のモチベーションやスキルアップにつながるのではないかと考え、出品いたしました。

○制作の原動力となるものは?

 空の色や草花の色といった、自身の周辺のある美しい色彩を作品で表現したいと思う気持ち。自分の作ったものを手に取り使って下さる方々の声。技術を伝えてくださった先人たちの思い。それと何よりも作る楽しさが原動力になっています。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 変わらず、糸を紡ぎ、真摯に染めや織りと向き合って、作る喜びを感じながら制作を続けていきたいと思います。10年後も、挑戦者でありたいと思います。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 会の事をあまり知らないまま、初めて出品いたしました。

 実際に講評会に参加させていただき、高い技術や経験を持った方々が多いのにとても和やかで親しみやすい雰囲気を感じました。


 

兆し

(織)大塚 由衣

○なぜ国展に出品しましたか?

 制作を続ける中で、客観的な視点を知るために、一度は公募展に出品してみたいと思っていました。今回はタイミングだったと思います。

○制作の原動力となるものは?

 好奇心。

 この糸とこの糸、この色とこの色、このやり方ではどうか、試してみたいことが渋滞して順番待ちしている。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 健康で、今と同じように周囲の人や環境に恵まれ、制作できることに感謝しながら生きていたい。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 特に先入観のようなものはなく、歴史のある大きな公募展というイメージ。


 

時絣

(織)柏木 奈緒子

○なぜ国展に出品しましたか?

 県内の工芸展には何度か出展したことがあったのですが、自身ののモチベーションアップの為に思い切って国展に出品しました。

○制作の原動力となるものは?

 自宅で本建て正藍染を建てて糸染めをしているので、甕の調子によって得られる幅の広い濃淡や、草木染を重ねることによって生まれる色の深みなどの組み合わせで無限大の可能性があり、その追求が原動力となっています。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 少しづつ技術と知識を習得し、10年後は今より幅広い視野で染織を追求していたいと思っています。10年後というよりは、生涯かけてやっていきたいです。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか?

 様々な作風に挑戦できる場所だと思いました。


 

工芸部奨励賞

水際

(木工・漆)倉澤 真

○なぜ国展に出品しましたか?

 自分自身の技術や表現を試す挑戦の場であり、新たな視点や刺激を得て自己成長させるための機会だと考えたからです。

○制作の原動力となるものは?

 自然の中に在る美しさがインスピレーションの源泉となっています。その自然が織りなす刹那の輝きを自分ならではの形で表現したい。それが原動力です。

○10年後、どうありたいとお考えですか?

 10年後、技術をさらに研鑽し、表現の幅を広げながら現在と変わらず創作の道を歩み進んでいたいと考えています。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか?

 長きにわたる伝統を重んじながらも、同時に新しい表現を追求する革新的な精神を併せ持っているというイメージを持ちました。


 

霜雫

(染)後藤 陽子

○なぜ国展に出品しましたか?

 毎年国展の会場に足を運ぶたび憧れていましたが今回お世話になっている先生からの勧めもあり挑戦してみようと思いました 

○制作の原動力となるものは?

 試作を重ねた末にできる模様や美しく染め上がった色を見るときの喜び、そして糸を解くときのわくわく感でしょうか

 思うようにできないときでもすべてが楽しいから 

○10年後、どうありたいとお考えですか

 創りたいという想いがある限り少しずつでも続けていきたいと思います

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 自由で多様な表現の場であり学びと成長の場であると思います


 

山彦

(織)小林 眞弓

○なぜ国展に出品しましたか?

 長年師事した恩師がお若い頃、国展に入選なさっていたと伺い、自分もいつかはチャレンジしたいと思っていました。

○制作の原動力となるものは?

 染織の全ての工程は、毎回発見があり心地良いです。と同時に悩ましく手強いと感じます。それが魅力です。

○10年後、どうありたいとお考えですか

作ることの喜びが感じられる布を織っている自分でいたいです。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

講評会のあたたかさが嬉しかったです。会場には「ものづくり」の喜びがあふれていました。


 

影格子

(織)近藤 裕子

○なぜ国展に出品しましたか?

 数年前より中部国展へ出品していましたが、今年は開催されないとのことでしたので、いつかは…と思っていた本展に挑戦してみました。

○制作の原動力となるものは?

 制作していくと、考えていたことと違うことがあり、失敗から学ぶことや新たな発見が楽しく次への挑戦になっています。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 こういうものを作りたい!と思っているそのものを作れるようになっていたいです。

 今はまだ思い描いていたものと違うな、というものが多いので。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 想像力豊かなセンスのよい方々ばかりだと思います。

 現状に満足することなく、いつも今以上を挑む姿勢を見習いたいと思います。


 

水の記憶

(織)近内 ゆかり

○なぜ国展に出品しましたか?

 国展は毎年拝見し、高い技術と洗練された作品の数々に刺激を受け憧れていました。

 いつか挑戦したいと言う思いが膨らみ、思い切ってチャレンジしました。

○制作の原動力となるものは?

 沢山の工程を一つ一つ丹念に重ね、一枚の布を生み出す楽しさです。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 感性を磨き技術を高め、より自分らしい表現が出来るようになりたいです。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 伝統と技術を継承しつつ開かれた新しさを感じます。


 

工芸部奨励賞

明けてゆく

(織)鈴木 弘子

○なぜ国展に出品しましたか?

 毎回拝見していて、ウールの作品についてはタピスリーのような壁面作品が多いので、日常生活の中で楽しんで使える布を出品してみたいと思いました。

○制作の原動力となるものは?

 身の廻りの自然の変化に対する感動、自然に対する感謝の気持ち、一頭ずつ手触りや風合いの違う羊の質感。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 生きている限り、自分にとって新鮮に感じられる仕事を続けていたいです。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 用と美を兼ね備えた作品が多く出品されていて、全体に明るく、好感を持っています。


 

いしだたみ

(染)髙橋 秀子

○なぜ国展に出品しましたか?

 教えていただいている先生に勧められて出品させていただきました。

○制作の原動力となるものは?

 日常生活とは異なる時間を体験し、作品を作って行く工程図案を考えさらにそれを精査して行く過程などです。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 年齢的にあとどのくらいがんばれるかわからないですが、できるかぎりがんばって作品を作って行きたいと思っています。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 自分の作品に対しての思い、作品に仕上げて行く工程など各自の力の入れ方など作家さんの思いを感じます。


 

のびしろ

(織)谷内 麻子

○なぜ国展に出品しましたか?

 国展はずっと憧れていて展示を観覧するだけだったのですが、数年前からもし自分が出品するならどんな作品が制作できるだろう、と想像しながら観てきました。

 昨年の国展を拝観したとき、今後表現を深めていきたいと考えていた手紡ぎによるノッティング技法で何か制作できるかも知れない、という閃きが降りてきて今回の応募に至りました。

○制作の原動力となるものは?

 自然や造形の美しさに触れた時に、それを表現したいという衝動に駆られます。

 その思いを忘れないように写真を撮ったりメモをしますが、そうしなくてもずっと心に引っかかっているものが制作の糧になることもあります。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 制作は私にとって人生の喜びでありまた苦しみでもあります。

 自分を感動させられる作品ができたらまた人に感動を与えられるのかとも思います。そんな制作を深めていきたいです。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 自由で様々な表現があり、高い技術でありながら傾向にとらわれない豊かさと包容力があると思います。

 


 

不安と幸せ―他者―

(染)野澤 花乃

○なぜ国展に出品しましたか?

 女子美術大学に通っていて、卒業生や先生方の作品を国展に観に行っていましたが、大学を卒業し、卒業制作を出品することを教授に勧められたので出品しました。

○制作の原動力となるものは?

 原動力は自分の感情です。道に咲いている花をみてキレイと感じたり、将来への不安を感じたり、日常の様々な感情を作品にします。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 染の作家として生計を立てられるようになりたいと思います。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 入選する前までは堅い印象がありましたが今回入選させていただいて、直接お会いしたらとても温かい方が多い印象をうけました。


 

少女は菫と対話する

(織)浜田 綾乃

○なぜ国展に出品しましたか?

 国展に出品することによって、染織をしている方や染織に興味のある方、お着物が好きな方とのご縁がつながったら、自分の世界が広がるだろうと思い応募しました。

○制作の原動力となるものは?

 群馬県に移住して養蚕に携わるようになり、心を尽くしてお蚕さまを育てる養蚕農家さんたちのお力になりたいと強く感じるようになりました。

  そのために私ができるのは織ることだけなので、少しでも良いものを織ろうと思っています。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 日本だけでなく海外でも高い評価を得られるような布を織れるようになっていたいです。

 近年の気象はお蚕さまにとっても過酷で、人間の介助なしには生きることのできない完全な家畜であるお蚕さまの命をこれからも繋いでいくには、世界中の人達と手を取り合い知恵を出し合っていく必要があると考えています。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 


 

痕跡の器

(木工・漆)森川 達男

○なぜ国展に出品しましたか?

 自分の中にある「祈り」や「静けさ」のような感情を形にしたいと考え、その表現がどこまで社会に通用するのか試したいと思ったからです。日々の制作の中で、目標に置いている国展を選びました。

○制作の原動力となるものは?

 木という素材が持つ「痕跡」や「時間」が、私にとっての原動力です。一本の木材が辿った歴史や、そこに残る年輪、傷、経年の変化。それらをうまく活かせるような作り手でありたいと考えています。

○10年後、どうありたいとお考えですか

「世界のどこかで、私の椅子が静かに人の人生に寄り添っている」そんな家具を作れたらなと考えています。

 世界中の人々にとって、心のアンカーとなるような家具を作り続けていたいです。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 長い歴史の中で培われた確かな美意識と、作家一人ひとりの個性を尊重する自由さが同居している場だと感じます。

 これからの工芸の可能性を切り拓く存在であってほしいと願っています。


 

藍染絞綿飾布

(染)山㟁 卓

○なぜ国展に出品しましたか?

 自らの技術の向上と、”用”から解き放たれたスケールの大きなものをつくってみたいという感情に駆られたため。

○制作の原動力となるものは?

 布を絞り、藍で染め、作品にしてゆく過程が純粋に楽しいからです。また、家族や日々関わってくださっている方々という存在も原動力となっています。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 藍を育て、蒅をつくり、その蒅で藍を建てて、つくりたいとおもうものをつくる。

 いまと変わらず、藍のあるくらしの中で、つくることを楽しんでいる自分であってほしいです。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 今回、初めての出品と入選だったのですが、展示会場でお会いした方々や、会場の雰囲気からおおらかさを感じました。また、つくり手という人そのもの、そして作品、どちらも大切にしてくださる温かいところだと感じました。


 

工芸部奨励賞
ゆらぎ

(染)山本 晴江

○なぜ国展に出品しましたか?

 今、数人で絞り染を習っていて講師の先生から、出品をすすめられたので。何年も染めてきて、やっと作品らしきものになったかなぁーと思いながらも、出品とは考えていなかった折、先生からすすめられた。

○制作の原動力となるものは?

 今回の作品は「きもの」です。

 自分で染めた「きもの」をまとってみたい…の一念と藍の色、染の奥深さに引き込まれ、プラン・デザインを布・糸との関連でどう折り合いをつけるか…沢山考え実現してゆく楽しさにのめり込み…⇒それが”楽しい”ということでしょうか。

○10年後、どうありたいとお考えですか

 工芸・染色をとりまく環境が10年前とは激変しているように、これからの10年後はさらに染色関連の材料も扱う人も減少が考えられ一人でも染色に興味のある、染める人が増えるよう活動しながら他の方々にも教えられるようになりたい。

 見てさわやかなゆったりとした気持ちになれるような作品をつくりたい。

○国画会工芸部に対してどのようなイメージをお持ちですか

 特別な『イメージ』はありません。毎年見せていただいて”特に変わった”様子は無いように思います。


     2025/06/29  お知らせ


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