若手輩出の北海道版画界
会員: 内 藤 克 人
北海道では、20代から30代前半の若手が着々と育っている。札幌の隣、北広島にある道都大学では、版画を志す学生が多く、卒業後も活発に制作に取り組む若者も多い。札幌大谷大学からは銅版画の作家が育っている。ここ数年、国展に連続入選している高野理栄子もその一人である。 84回国展で奨励賞を受賞した石井誠(シルク)は紙版画とシルクを融合した独自の技法を開発し、地元「道展」でも新人賞を受賞するなど活躍が目覚しい。国展準会員の神田真俊(シルク)は荒削りなマチエールが特徴的。今後の展開が楽しみな作家である。
国展以外の有力作家として、幾つかの国際版画展で大賞を受賞した関谷修平(シルク)を挙げておく。細い緻のモアレ現象を作品化したミニマルな空間は独特の空気感が漂う。木版では、東京から帰郷した山口星子、道東・帯広が拠点で、大型面面で緻密な仕事を競う後藤由美子、奥秋広美達にも期待が集まっている。
若手が次々にデビューしてくる状況は喜ばしいが、制作を持続してゆくことは大変である。将来を嘱望されながら、仕事や結婚、出産などで制作が困難になり、消えてゆく作家達も多い。地元唯一の作家集団「北海道版画協会」には若手を育ててゆくための様々な施策や支援が求められている。 (北海道北広島市在住)
仲間の輪を広げる
会員:吉 田 志 麻
日本は高齢化社会へと大きく変化し、その新しい在りようが求められています。高齢者とは一体、何歳からの事を云うのかと思うことがあります。多忙な現役時代を終え、さあ!これからが自分の時間だ!と感ずる人も多いのです。地域性もありましょうが、佐渡、新潟地区では中高年の元気パワーがすさまじい勢いです。地域サークル、カルチャースクールなどが一役かっているのです。人生経験豊富な中高年にこそ、美術、なかんづく、本の力をかりた版画作りの人口を増やし、作品制作に魅力を持たせ、和の中に美術を楽しんで、又、一作、一作が日記になればスバラシイと思います。
私達先輩も、簡単な小作品から興味を持ってもらい、自分達の作品展を開き、大作に手をかけさせるのも使命だと思っています。イ中間は待っているだけでは集まらない。ひとり一人が仲間を見つけ、継続は力なりと支え合ってゆく。何年かの間に驚く程個性的、魅力的な表現を見せる方も現れて来るのです。
アメリカの国民的画家『モーゼスおばあさん』*の例を待つまでも無く、何歳からでも人の可能性は聞かれているのです。日本の将来に『人間バンザイ』の時代を切り開いてゆくために!! (新潟市在住)
*アンナ・メアリー・モーゼス:晩年に絵を描き始めたモーゼスおばあさんは、ルーブル美術館にアメリカ人画家で初めて絵を買いあげられました。