第2回 栄光のOB 宇治山 哲平
第2回 宇治山 哲平
活躍した嘗ての会員OBを思う・・・
宇治山 哲平 Ujiyama Teppei 1910‐1986
確か昭和22年だったと思う。時々、あの当時では背の高いほうだったと思うが、少し髪が波打ったオカッパ頭の30代後半の男が町を闊歩しているのを見かけるようになった。 ルパシカみたいの白い厚手の生地の丸首が黒で縁取られたシャツを着て、腰の辺りを真田紐みたいな帯で右側で結んでだらりと下げていた。薄い眉に黒い点を打ったような瞳をして柔和な山羊みたいな感じだった。あのころは珍しかった紐のない踵の磨り減った靴を履いていた。後で流行ったヒッピーそのものだった。 あの人誰?と父に聞くと、絵描きのテッペイさんだよ。代書人の掌吉さんの息子さんだと言った。後で知った事だが、勤めをやめて絵かきになるんだと故郷に帰って来たそうだ。絵かきで食えるんだ凄いなーが偽らざる気持ちだったが、はた目にも生活の苦しさは感じられた。 のが「静物 白」だった。小さいイーゼルの前には古びた虎?の毛皮が敷いてあった。先生と私と2人座ると1杯と言う感じだった。 正直言って私は油絵は日田中学校に何点か飾られていた初代の図画教師であった庄野宗之助先生(哲平先生の恩師)の作品しか知らなかったので、理解するのに暫くかかった。 先生の回りには沢山の絵かきの卵が集まって来た。日田高等女学校に勤めていた岩尾秀樹さん、京都絵専に居てまだ学生だった岩沢重夫さん木下章さんなど、ときどき中津の長野静司さんが来て紹介された事もあった。もう早く亡くなったが、そのころ福岡で朱貌社を一緒にやっていた日本画家の上田宇三郎さんがたずねて来て、たまたま持って行った私の絵を批評して貰ったこともあった。 昭和36年には、その年に創立された大分県立芸術短期大学の教授になり別府に居を移した。先生の周囲に若い絵かき達が集まって居た。松野良治さんや谷口晶之君などが直立不動の姿勢で先生の話を聞いていた。昔言い慣れたてっぺいさんという言葉はもうとても出せなかったが何となくうれしかった。
前の年、新憲法発布記念ポスターで2位になったり、絵は好きで小さいころから描いていたので油絵と言うものを見たいなーと思った。道ですれ違うといつの間にか会釈をするようになっていたのでお互い顔見知りにはなっていた。 先生も私も通った男子校と言う小学校の運動会の日、観覧席の後ろから背伸びして徒競走を見ていた。たぶん息子さんが走っていたのだろう。思わず絵を見て下さいと頼んだ。二つ返事で、「おお、いいよ。すぐ持っておいで」とそのまま近くの自宅にすたすたと帰った。私は息せき切って家に帰り何枚かの水彩を持っていった。どう言われたかは忘れたが初めて訪れた先生のアトリエは強く印象に残っている。1坪ほどの玄関は絵の置き場になっていて50号くらいのキャンバスが裏返しに10数枚立て掛けてあった。左の庭に面した角の6畳間がアトリエだった、1面は壁でもう1面は襖で仕切られていた3尺ほどの濡れ縁が裏の部屋へ伸びていた。所狭しと立て掛けた絵は皆表を見せて蓮や静物などが描かれていた、今年の国展の絵だと正面におかれていた
国画会準会員 初代宇治山哲平美術館長 伊藤忠雄
1910年 | (明治43年)9月3日生まれる。 |
1931年 | 国画会に初めて油彩画「冬山」「山腹」を出品福島繁太郎の知遇を得る。 |
1951年 | 宇治山哲平展(以降、毎年東京・大阪他で個展活動を続ける。) |
1961年 | 大分県立芸術短期大学教授となる。 |
1965年 | 「古代エジプト」「古代ペルシャ」(絵画シリーズ)を発表。 |
1966年 | 大分合同新聞文化賞を受賞する。 |
1971年 | 第12回毎日芸術賞の美術部門で受賞。大分芸術短期大学学長に就任。 |
1973年 | 第32回西日本文化省を受賞。大分総合検診センターに壁画「歓」を描く。 |
1976年 | オリエント素描集(西日本新聞社)を刊行。 宇治山哲平展(神奈川県立近代美術館・北九州市立美術館) |
1978年 | 「華厳シリーズ」発表。別府大学教授に就任。 |
1984年 | 日田市大超寺の本堂襖絵「極楽浄土」完成。 |
1986年 | サントリーホール大理石「響」完成。 6月18日逝去(76才)。「宇治山哲平美術館」設立委員会発足 |
1989年 | 作品集「宇治山哲平」(西日本新聞社)刊行。 大分県立芸術会館「宇治山哲平遺贈作品展」開催。 |
1991年 | NHK大分放送局開局50周年記念TV番組「宇治山哲平の世界」放映。 |
1994年 | 6月18日宇治山哲平美術館、豆田町に開館。 |
1998年 | 大分県立総合文化センター陶壁画「弾」完成。 第10回日田市所蔵宇治山哲平展を宇治山哲平美術館にて開催。 |
所蔵 |
作品名 |
制作年度 |
東京国立近代美術館蔵 |
献 |
1963年 |
響 |
1969年 |
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京都国立近代美術館蔵 |
王者 |
1970年 |
貴 |
1972年 |
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能・鵺による |
1974年 |
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壮 |
1975年 |
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希 |
1976年 |
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神奈川県立近代美術館蔵 |
弘仁佛 |
1957年 |
灼 |
1975年 |
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三重県立美術館蔵 |
伊勢 |
1976年 |
福岡県立美術館蔵 |
朗 |
1967年 |
婉 |
1970年 |
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古希自像 |
1981年 |
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阿吽 | 1984年頃 | |
やまとごころ | 1985年 | |
大分県立芸術会館蔵 |
石と盆 |
1951年 |
古代エジプト |
1963年 |
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宙 |
1969年 |
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弾む |
1972年 |
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王朝 |
1974年 |
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万華 | 1982年 | |
華厳 | 1984年 | |
やまとごころ | 1986年 | |
広島市現代美術館蔵 | 漲りて四方に | 1984年 |
高松市美術館 |
華厳No.11 |
1979年 |
北九州市立美術館蔵 |
白鳳佛 |
1957年 |
岩の精 |
1960年 |
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古代ペルシャ |
1965年 |
|
擁 |
1970年 |
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動 |
1971年 |
|
想 |
1975年 |
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沃土 |
1975年 |
|
旺東京 |
1975年 |
|
福岡市美術館蔵 |
オリエント夜曲 |
1966年 |
雪の子 |
1971年 |
|
想 |
1975年 |
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華厳No.2 |
1978年 |
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白華 | 1985年 | |
別府市美術館蔵 |
王朝 |
1974年 |
リオ・デ・ジャネイロ美術館蔵 |
華厳No.3 |
1978年 |
2022/07/07 絵画部・栄光のOB|